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白内障手術症例⑦(斜視と白内障)

今回は、内斜視のある患者様で単焦点レンズを用いた白内障手術についてご紹介します。

 

まず、斜視がある方には白内障の説明と共に斜視についてしっかりとご説明しています。中には、白内障の症状で来院され、検査するまで斜視について知らなかったという方もいらっしゃいます。事前に、斜視についてもしっかりとご理解いただいた上で、白内障手術を受けられるように下記の2点についてお話するようにしています。

 

ーーーーー斜視検査についてーーーーー

斜視がある患者様にとって、白内障手術の前の斜視の検査はとても重要です。
・どの程度の斜視なのか
・固定斜視なのか交代性斜視なのか
・固定斜視であるならば弱視はないか
といった斜視に関する精密な検査を手術前に必ず行います。
斜視(外斜視でも内斜視でも)によって、両眼の白内障手術をすることで複視(ものが2重に見える状態)を強く自覚してしまう可能性があります。白内障手術は成功しても、複視によって日常生活に支障がでてくることが有り得るのです。

 

ーーーー白内障手術後の見え方についてーーーー

検査結果や斜視の程度によって、白内障手術プランをご提案します。
大きく分けると下記3つになるのですが、実際は患者様のご希望を伺いながら最終的に決定します。

 

手術後にプリズム眼鏡をかけて補正する。(軽度の斜視)

 

プリズム眼鏡でも補正できない、抑制もないため両眼の白内障手術をすると、却ってものが2重に見えてしまいます。その場合、片眼のみ白内障手術をします。(中程度の斜視)

 

抑制といって斜視角(目が同じ方向を向いていない角度の差)が大きいと脳が両眼で見ることを放棄し、片眼のみで見るため2重に見えることは無くなります。しかし両眼視ではないため立体的に見える能力は劣ります。
ご希望される場合は、先に斜視の手術という選択肢もありますが、ご希望されない場合は、立体的に見えにくい可能性があることをご了承をいただいた上で弱視がなければ両眼の白内障手術をいたします。(強度の斜視)

※弱視がある場合は片眼のみの手術となる場合もあります。

 

左右の眼を白内障手術でそれぞれ遠方と近方が見えるように合わせることで、結果的に眼鏡の装用を減らして日常を過ごせるようにする方法です。この両眼の眼を見える距離によって使い分けることをモノビジョンといいます。

 

 

眼科医として私は、白内障手術後もできるだけ(できるなら手術前以上に)両眼を有効に使っていただきたいと思っています。そのため、可能な方にはモノビジョンをご提案します。

 

♦モノビジョンについて♦

例えば、右眼で遠方を見えるように、左眼は近方を見えるように合わせた場合は、脳が慣れてくると遠方を見る時には左眼の映像を脳が放棄するため(これを抑制といいます)、遠方に合わせた右眼のみで見ることになり映像がはっきりとします。そうすることで左右の眼を使い分けることをいいます。


今回の患者様は中等度の斜視であり、左右を同度数にすると、2重に見えて術後に生活に支障が出る可能性がありました。そのため事前にモノビジョンに慣れるかどうかを確認した上で結果的にこちらの患者様は、モノビジョンになるよう左右の眼内レンズを決定し、白内障手術を行いました。

 

【症例】60歳代・女性

両眼の羞明(まぶしさ)が強く自転車の運転が怖いとのことで来院されました。また、両眼で物を見ると対象物が横にずれて2重に見える症状もあるとのことでした。

 

ーーーー患者さまのご希望ーーーー

 

まぶしさをなくして日常生活を快適にしたい。

 

ーーーーレンズの決定・手術についてーーーー

検査結果は、羞明(まぶしさ)は白内障の影響でしたが、両眼視で2重に見えるのは内斜視が原因でした。眼内レンズは単焦点眼内レンズ、内斜視があるため手術後にモノビジョンになるように手術をすることにしました。

 

♦モノビジョンが可能かを確認するために♦

手術前検査において、患者様は両眼とも同じ度数の近視で、両眼視でものを立体的に見ておりモノビジョンの状態ではありませんでした。
そこで、モノビジョンの見え方に適応することができるかを確認するために、検査でソフトコンタクトレンズを装用し人工的に片眼を遠方、もう片眼を近方に合わせて、モノビジョンの状態を作り出しました。この状態に脳が慣れなければ白内障手術でモノビジョンにしても両眼視での違和感が強くなります。しかし、脳が適応すれば片眼ずつ使い分けることが出来るようになり、モノビジョンが可能になります。また、抑制がかからず補正できない斜視であっても、左右の度数をずらしてモノビジョンにすることで抑制を誘発することができます。

 

患者様には、手術前に1週間ほどソフトコンタクトレンズを使用して生活していただき、その後検査を行いました。モノビジョンと抑制の両方をしっかりと確認できたため、モノビジョンでの両眼の白内障手術を行うことにしました。

 

ーーーー手術後ーーーー

ものが2重に見えることはなく、視力も良好でした。5mの視力は以下のようになります。

右視力 : 0.1×IOL(1.2×IOL×S-3.00D:C-0.50DAX79)

左視力 : 1.2×IOL

これは、右眼で裸眼で近方約30㎝の距離が見えており、左眼で裸眼で遠方が見えている状態となり、裸眼で左右の目を使い分けることが出来ているため、モノビジョンで視力が出ていることになります。
患者様は現在も、ものが2重に見えることはなく眼鏡なしで快適に過ごされているとのことです。

 

このように患者様の中には、白内障手術ご希望で来院されますが、斜視や緑内障のように他の眼疾患をお持ちの方もいらっしゃいます。お一人お一人の眼の状態をしっかり把握し、それに基づいて術後の見え方をシュミレーションして手術計画を立てることが大切だと思います。

 

当院では白内障セミナーを開催しております。
実際にこのセミナーに来られた患者様には、他院で白内障と診断されているけれど、他の眼の病気もあるため手術に不安があるといったご相談も多くあります。手術後の見え方や手術についてなど、ご質問や気になることがございましたら、いつでもご相談ください。

 

白内障手術について多数お問い合わせをいただいており、現在は、初診から1カ月ほどで手術を行っております。免許の更新や行事などで早めの手術をご希望の方や日程のご指定のご希望がございましたら出来る限りお応えできれるように調整させていただきます。ご来院前にその旨お電話いただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

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