白内障手術後の
視力回復について

白内障手術後の
視力回復にかかる期間

眼鏡

白内障の手術を受けてから最長で約1か月程で視力が回復すると考えられています。

術後すぐに見える方がほとんどですが、術後は瞳孔が広がるため違和感を覚える方も多くいらっしゃいます。
また、自分の目と眼内レンズでは焦点の合わせ方が異なるため、慣れるのに時間がかかる方もいらっしゃいます。
したがって、視力が安定するまでの術後1か月は、様子を見て頂くことをお勧めいたします。眼鏡やコンタクトレンズが必要な方は、視力が安定する術後1か月後を目安に作成することが望ましいといえます。

白内障手術を受けるとどれくらい
視力が回復しますか?

白内障手術前の検査は、白内障によって水晶体が濁っている状態での検査となります。
手術後の正確な視力を確認することは難しいため、手術前の段階で視力がどのくらいまで回復するかなど具体的な数字や内容をお伝えすることは難しいといえます。
しかし、白内障手術によって水晶体の濁りが解消され、眼内レンズによって乱視・近視・遠視が矯正されることで、日常生活に支障がないまで視力が回復することを期待できます。

白内障は手術後に
再発しますか?

目の中の水晶体が白く濁っている状態を白内障といいます。
白内障の手術では、白く濁った水晶体を取り除き、水晶体の替わりに眼内レンズを挿入するため、白内障が再発することはありません。

白内障手術を既にされた方で、数カ月から数年たってから白内障のような症状を感じる方がいらっしゃいます。これは白内障が再発したのではなく、多くは「後発白内障」が発症しています。術後に眼内レンズが入っている嚢(のう)という膜が濁ると、白内障の症状のように視力低下や視界のかすみが生じることがあります。後発白内障は、濁った部分にレーザー手術をすることで治療することができ、レーザー手術による治療は当日に外来にて行うことが可能です。



術後の気になる症状

白内障手術を受けるにあたって術後の見え方を心配される方が多くいらっしゃいます。
術後はどのように見えるか、そして注意点についてお話します。

視力がなかなか回復しない

  • もともと網膜に別の疾患がある場合、視力が十分に回復しないことがあります。

  • 進行した白内障(成熟白内障など)の手術などで、長時間の手術となった場合、手術直後に角膜が浮腫み、一定期間見えづらさを感じることがあります。(時間が経過すれば治ります)。
  • 多焦点眼内レンズを使用した場合は、これまでの焦点の合わせ方と異なるため、脳の適応が追いつかず、すぐに視力が回復しない場合があります。(慣れるのに時間がかかる場合があります)
    高齢の方が多焦点眼内レンズを使用した場合に起こることがあります。長ければ視力の回復までに1年程かかる場合もあります。

まぶしく感じる

水晶体の濁りが解消された直後は、目が慣れていないため多少まぶしく感じることがあります。時間が経つにつれて解消されることがほとんどですが、まぶしさが強い場合はサングラスなどで対処すると良いでしょう。

青みがかって見える
(視界が青色っぽく感じる)

白内障の場合、水晶体が濁り、黄色っぽい色の状態になります。
手術によって濁りが解消されると、青い色の光が入りやすくなるため、ものが青っぽく見えることがあります。手術が片目のみだった方は特にこのような症状を訴える方が多いですが、3か月程経過すると次第に解消されていくことがほとんどです。

視界に黒いものが
飛んでいるように見える

視界に黒いものが飛んで見える状態のことを飛蚊症といいます。
術後に見えづらさが解消されることで、これまで気づいていなかった飛蚊症に初めて気づくことや、飛蚊症がこれまで以上に気になるようになることがあります。飛蚊症は生理的なものですが、網膜剥離の際にあらわれる症状でもあるため、気になる症状や違和感がある方は専門医に相談することをお勧めします。

自動車のライトがまぶしい、
輪がかかったように見える

眼内レンズで反射した光が散乱することで、このような症状が起こります。夜間やまぶしい光を見た際に起こることが多いです。
時間が経つにつれて解消されていくことがほとんどですが、ご不安な方は相談することをお勧めします。

白内障手術後の生活について

白内障の手術は5〜10分程度で終了する比較的短い手術ですが、術後に注意して頂きたい点がいくつかあります。
術後の注意点、安静期間の過ごし方、見え方の違和感・変化についてご紹介します。

手術直後の注意点 ~安静期間の過ごし方~

白内障手術は日帰りで行うことが可能なため、ご自宅に帰宅されてからは以下の点に注意してお過ごしください。

  • 目を押さえない
  • 眼帯や保護メガネは、医師の許可が出るまで外さない
  • 洗顔・入浴をしない
  • お酒を飲まない(控える)
  • 化粧・スポーツをしない

術後すぐに傷口は塞がりますが、術後数日間は目の表面に傷が残っている状態です。
目を押さえたり、洗顔・入浴など、目の中に細菌が侵入するリスクのある行動は避けてください。手術を行った医院の安静基準に従って行動しましょう。

また、眼帯や保護メガネを付けることで細菌の侵入、紫外線、ホコリ、風などから目を保護する効果や、手や物が目に当たることを防ぐことが期待できますので、医師の許可が出るまでは外さずにお過ごしください。

手術後の視力と見えかたの違和感・変化

術後の視力や見え方の回復には個人差があります。すぐに視力が回復する方、安定するまでに1か月程度必要な方もいらっしゃいます。

また、手術によって水晶体の濁りが解消されることで、手術前と比べて目に多くの光が入るようになり、術後一定期間はまぶしさを感じることがあります。
まぶしさは時間が経つにつれて次第に消えていきますが、なかなか改善しない場合は医師に相談することをお勧めします。

生活への影響と注意点

術後1週間程度は目の表面に傷が残っている状態であるため、目の中へ細菌が侵入し、感染を引き起こしていないか経過観察を行う必要があります。そのため、手術直後より、目をおさえる、洗顔や入浴、お化粧やスポーツはお控えください。
手術後すぐに視力が回復している場合も、安静基準に従って行動してください。普段通りの生活に戻るまで最長で1か月程かかると言われています。
処方された点眼薬を使用し、手術後の診察は必ず受けるようにしましょう。

● 白内障手術後の車の運転

運転視力が戻るまでのペースは患者さまによって異なります。視力が回復したと思っていても、まだ見え方に慣れていないことがあります。術後に運転の予定がある方は事前に医師に相談されることをお勧めします。医師から許可がでるまでは運転はお控えください。

● 白内障手術後の飲酒

飲酒術後の飲酒により、傷口の炎症が悪化する可能性があります。また足元がふらつくなどで思いもよらず目をぶつけたりすることもあります。術後1週間程度は、飲酒をお控えください。

● 白内障手術後の入浴・シャワー

入浴手術後の安静基準に従って、日常生活を送っていただくことをお勧めします。手術後1週間以内は、洗顔や通常の入浴(目に水がかかること)はお控えいただくことがあります。一般的に手術当日と翌日は、入浴・シャワーともに避けていただきます。目の表面に傷が残っており、水が跳ねる、汗が入るなどから、細菌感染を起こすリスクがあります。術後3日目・4日目は、首から上を濡らさない状況であれば、入浴・シャワー共に可能となります。術後5日目以降は、通常通りに入浴・シャワーをしていただくことが可能となり、視力も安定し普段通りの生活に戻ります。(当院の安静基準による)

● 白内障手術後の仕事や家事

家事医師に相談の上、負担が軽い仕事や家事であれば手術翌日から行うことが出来ます。なお、目の表面の傷から細菌が侵入することを避けるために、汗をかきやすい力仕事や外での仕事、土や植物に接する仕事などはお控えください。

● 眼鏡を作製するタイミング

眼鏡白内障手術では、目に眼内レンズを挿入するため、ほとんどの場合は手術前に使っていた眼鏡は、術後には使えなくなります。
眼内レンズに単焦点レンズを用いた場合、術後はピントを合わせるために眼鏡で視力を矯正する必要があります。
日常生活で影響がある場合は、医師に相談の上、術後1カ月程度の裸眼視力が安定してきた度数で一度眼鏡を作り、視力によっては、さらに安定する2〜3か月後に再度適切な度数の眼鏡を作るようにすることをお勧めいたします。

手術後に疑われる病気・合併症

術後に視力が戻るまでの間、光がまぶしくなるだけでなく、見え方がおかしいと感じることがあります。以下に術後に起こる可能性のある疾患をご紹介します。

● 飛蚊症

飛蚊症視界の中で虫のようなものや黒い物体が動いているように感じる病気を、飛蚊症といいます。視線をずらしても異物がついてくるように感じ、また、異物が小刻みに揺れているようにも感じることから、目の前で蚊が飛んでいると錯覚する状態となります。
認識される異物のサイズや形状には個人差がありますが、通常は気にならなくても、空を見上げた時や白いものを見た時に自覚することが多いです。

発症の原因は目の中の硝子体の形状・濁りによることがほとんどです。
白内障手術によって水晶体の濁りが解消されると、以前からあった硝子体の形状・濁りを認識しやすい状態となり症状があらわれます。目の中の硝子体(ゼリー状)は、若年期は眼球内部を満たしておりますが、加齢とともに形状が変化してきます。
術後に目の状態が大きく変わることで自覚症状も増しますが、2〜3か月経過すると次第に症状は気にならなくなることが多い傾向にあります。

なお、白内障手術後とは関係なくこのような症状が突然起きた場合は網膜剥離に発展する可能性がありますので、飛蚊症の症状にお気づきの際は専門医へ相談することをお勧めします。

● 後発白内障

白内障手術後、しばらくして、水晶体を覆っている透明な袋状の水晶体嚢(すいしょうたいのう:透明な袋状の組織)に細胞が増殖することで水晶体嚢が濁り発症します。
症状は白内障と似ており視力低下を感じます。白内障は、一度手術をすれば再発することはなく、これは別の病気で「後発白内障」といいます。

発症する時期は個人差があり、術後数か月〜数年後に発症します。治療方法は、レーザー手術を行うことによって視力は回復します。当院では、レーザー手術による治療は最短で当日の外来が可能となっております。レーザー手術後の行動制限はありません。

● 嚢胞様黄斑浮腫

「嚢胞様黄斑浮腫」とは、白内障手術の術後早期に起こる、視力に直接関係する網膜の中心部分(黄斑部)にむくみ(腫れ)が生じる症状です。自覚症状としては、視力低下を感じます。
術後は医師の指示に従った点眼や、注意事項(禁酒など)を守らなかった場合や、糖尿病網網膜症の患者さまに発症する確率が高いとされています。
術後の点眼や医師からの注意点は必ず守るようにして、定期検査を必ず受けるようにしてください。

● 術後眼内炎

手術の際にできた傷口から細菌や真菌(病原性カビ)が侵入し、目の中で細菌が増殖し、炎症が生じて化膿した状態になることを術後眼内炎といいます。白内障手術後の発症頻度は、2000~3000例に対して1件の割合(約0.05%)といわれ、手術後に最も気をつけるべき合併症といわれています。

白内障手術後の眼内炎には、早発性と晩発性の2通りあります。早発性は、手術後翌日~1週間の間に発症し、自覚症状は、眼痛・羞明・視力低下があります。一方、晩発性は、術後1カ月後くらいから数か月後くらいに発症し、自覚症状としては視力低下・充血・眼痛となります。

最も気をつけるべき合併症である所以は、菌の種類によっては毒素が眼内の神経組織にダメージを与え、元の視力に戻ることは難しくなることがあります。
特に強毒菌が侵入して炎症を起こすことが多い早発性の場合は、発見が遅れた場合には視力の予後が不良になることも有り、重篤な場合は失明にいたることもあります。
術後眼内炎を防ぐために、手術3日前から術後まで抗菌薬の点眼を処方し、点眼を続けていただきます。

患者さまには、自己判断で術後の点眼を中断したりせず、医師より指示された安静基準や術後の診察を守っていただくことが大切といえます。
当院では、術後1週間以内に3回、2週間目のタイミングで診察を行いしっかりと確認させていただいております。またそれ以降にも、突然目の痛みが生じる、ものが見えにくくなるといった症状があらわれた場合は、自己判断せずに早めに医師にご連絡ください。

● 網膜剥離

網膜剥離網膜剥離は、誰にでも起こりうる眼疾患で、目の内側にある網膜が剥がれる疾患です。発症したまま放置すれば失明の可能性があり、重篤な場合も失明のリスクがあります。
症状は、急に大きな影のようなものが見えるようになります。前兆としては、前兆としてキラキラとした光のようなものが見えるように感じたり、進行段階では、膜がかかって見えたり、視野の欠けを自覚することがあります。
白内障手術を受けた方は少しだけそのリスクが高まると言われておりますが、発生頻度は高くなく、稀な合併症ということになります。
発症時期は、術後数カ月後から数年後と幅があり、誰にでも起こりうる眼疾患であることから、手術との因果関係がはっきりしていないことも多いです。
網膜剥離は、検査で前兆を捉えることができ予防することができます。白内障手術後は、定期検査を受けることで防ぐことができるとも言えます。

手術後の定期検診

検査術後は、点眼薬を継続しながら、必ず定期検査を受けるようにしましょう。自覚症状がない場合でも、合併症が起こっている場合もあります。術後の経過観察を行い、視力の回復状況などを確認しましょう。

また、患者さまの術後の目の状態にあわせて点眼薬は処方されます。点眼薬を間違えた場合や点眼薬が切れてしまった場合は、自己判断はせずにすみやかに医師に相談しましょう。また、定期検査の前でも、目に違和感を覚える場合は速やかに医師に相談するようにしてください。

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