2025年5月12日に波面制御型焦点深度拡張レンズである「クラレオンビビティ」の乱視矯正レンズである「クラレオン ビビティ トーリック」が発売になりました。
※以前より発売されている乱視矯正なしの「クラレオンビビティ」は、過去のブログにてご紹介しております。
クラレオンビビティ(以降、ビビティ)はレンズとしては「波面制御型焦点深度拡張レンズ」という名称です。ビビティは全く新しい「波面制御型」という構造を取っており、グレア・ハローがほとんどなく単焦点の自然な見え方と遜色ないようになっております。加えて遠方から50~60cmまでの距離が視力の落ち込みなく見えますので車の運転やスポーツをされる方に最適なレンズとなっております。
ビビティより以前の焦点深度拡張型レンズは、回折型という構造をとっており、レンズの種類により程度の違いがありますが、グレア・ハローといった光がにじんで見えるような症状が出ることがあります。
乱視がある方にとって多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズと違い、乱視があるままでは裸眼視力が極端に下がってしまいます。よって、乱視がある方で多焦点眼内レンズを希望される方は、乱視矯正ありのレンズの中から選択していただく必要があります。
クラレオンシリーズはパンオプティクスもビビティも軽度の乱視でも矯正できるレンズ規格があるため、限りなく乱視を少なくすることが出来ます。
今回は、過去に他院で両眼乱視矯正レーシックを3回行った患者様の右眼のみの白内障手術です。
【症例】60歳代・男性
2年前より右眼の視力低下を自覚して来院されました。20年前に乱視矯正のレーシックを行っていますが、術後より乱視が直ぐに戻ってしまったと感じられて、1年間で3回レーシック手術を行っています。
【初診時の視力】
・右(5m):0.8(0.9×S+2.00D:C-1.50DAX100°)
・左(5m):1.0(1.2×S+1.00D:C-0.50DAX90°)
・右(30cm):0.2(0.6×S×+4.00D:C-1.50DAX100°)
・左(30cm):0.4(0.9×S×+3.00:C-0.50AX90°)
右眼の矯正視力は0.8ですが、前嚢下白内障といって少しの混濁でも見えにくくなる種類の白内障がありコントラスト感度も下がっていたため手術を希望されました。
ーーーー患者さまのご希望ーーーー
- 右眼のみ白内障手術を希望
(左眼は白内障がなく、遠方と中間の視力は良好) - 老眼により近くは見えにくいため左右のバランスをとって見えるようにしたい
ーーーーレンズの決定についてーーーー
左眼には白内障がなく遠方と中間の視力は良好だが、老眼により近方は見えにくいため、左右のバランスを保つ目的で遠方・中間距離が見えるクラレオンビビティかレンティスコンフォート®をお勧めしました。
患者様の場合、レンズ決定において特に考慮する点は過去に乱視矯正レーシックを3回行っていることです。
手術前の乱視(青数字)は左が-0.50Dと少ないのに対して手術する右は-1.50Dと強いことです。
多焦点眼内レンズを挿入するためには、乱視を最低でもー0.75以内に抑えたいので、乱視矯正が必要になります。
アルゴス・ベリオンで乱視軸を測定したところ、右眼全体の乱視軸が右が100°であるのに対して角膜前面の乱視軸が170°と乱視軸が70°違っているところにあります。結果は水晶体乱視が角膜乱視と逆方向に強いことになります。患者様のお話から過去の3回のレーシックの経緯は、乱視が直ぐに戻ってしまったからとのことですので、現在も検査数値通りに角膜前面の乱視が-1.50Dあると想定して度数を計算することにしました。
この検査結果を患者様にもお伝えし、ビビティに最終決定となりました。
ーーーー術後についてーーーー
手術直前視力と術後3日目の視力を下記に示します。
【初診直前の視力】
・右(5m):0.8(0.9×S+2.00D:C-1.50DAX100°)
・右(30cm):0.2(0.6×S×+4.00D:C-1.50DAX100°)
【手術後3日目の視力】
・右(5m):1.2×IOL(1.2×IOL×S-0.25D)
・右(70cm):0.9×IOL
・右(30cm)0.8×IOL
本来は少し見えにくい30㎝の距離も0.8としっかり出ています。
手術後の患者様の実感としては、両眼の違和感はなくよく見えているとのことでした。
乱視矯正を伴う手術においては、乱視軸や度数の決定に細かい度数設定が必要になります。患者様は、乱視矯正のために3回のレーシック手術を行っていることから詳細に確認する必要がある症例でした。
このような場合、精密機器による検査はもちろん重要ですが、患者様から過去の手術歴や経緯、手術後の感想などをしっかりとヒアリングすることが度数設定や手術をする上でとても大切になります。
ビビティは構造が「波面制御型」のため、「回折型」よりもグレア・ハローといった異常光視症がなく、ニューロアダプテーション(神経適応)し脳が適応しやすいレンズで手術後早期に視力が出るレンズといった印象があります。
近くは見えにくいという点はありますが、気にならない方にとってはなじみやすいレンズだと思います。
毎月第2金曜日に、当院にて多焦点眼内レンズ・白内障手術のセミナーを開催しております。詳細は、新着情報に載せておりますのでご興味のある方はぜひご参加お待ちしております。