当院では、緑内障の治療の選択肢の一つとして
**SLT「選択的レーザー線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)」**を導入しています。

■SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)とは?
緑内障の予防治療には、点眼薬・レーザー治療・手術など、進行度や患者様の状態に応じてさまざまな方法があります。SLTとは、緑内障の進行を止めるために眼圧を下げる目的で行うレーザー治療です。緑内障手術に比べ、より低侵襲で体への負担が少なく、安全性の高い治療法として注目されています。
【眼圧はなぜ上がる?】
目の中には房水が循環しており、毛様体からこの房水が産生され線維柱帯を通ってシュレム管に吸収されます。この線維柱帯は網目状の構造をしており、この部分が詰まっていると房水の吸収が悪くなり眼内に水が貯まります。それによって眼圧が高くなります。
【SLTとは?】
SLTは、繊維柱帯にレーザー照射し房水の通りをよくすることが目的です。線維柱帯(房水の通り道にあたる部分)に低出力のレーザーを照射し、房水の流れを改善することで眼圧を下げます。

■ SLTと緑内障手術の違い
比較項目 | SLT (レーザー治療) |
緑内障手術 (流出路再建術・濾過手術など) |
治療方法 | 線維柱帯にレーザー照射 | 眼内に切開を加える外科手術 |
入院の必要 | 不要(日帰り・外来で実施) | 場合により日帰り~短期入院 |
痛み・侵襲 | ほとんどなし | 麻酔+切開あり |
術後リスク | きわめて少ない | 感染・炎症・眼圧低下のリスクあり |
効果の持続 | 約1~5年(再施行可) |
比較的長期だが再手術の可能性あり |
日常生活への影響 | 治療後すぐ通常生活可 | 数日~数週間の安静が必要な場合あり |
■ 対象となる方
- 原発開放隅角緑内障(POAG)
- 落屑緑内障
- 高眼圧症(Ocular Hypertension)
- 点眼薬による副作用や治療継続が難しい方
- 点眼の本数を減らしたい方
- 眼圧が不安定な方
※ぶどう膜炎などの基礎疾患がある方、閉塞隅角緑内障、急性発作中、または炎症性疾患などがある方には適応がない場合があります。
■ SLTの特長
【メリット】
- 外来での日帰り治療が可能
- 痛みや視力低下などのリスクが非常に少ない
- 繰り返し治療が可能(組織へのダメージが少ないため)
- 点眼薬の負担軽減や中止が可能になることもあります
- 治療直後から通常の生活が可能です(制限はほぼありません)
【デメリット】
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ぶどう膜炎などの基礎疾患がある場合や閉塞隅角緑内障、急性発作中、または炎症性疾患などがある方には適応がない場合があります。
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SLT後、眼圧が下がらないことや、眼圧が下がっても2年~5年経過すると眼圧が戻ることがあります。
■ レーザー治療の流れ
1、点眼麻酔(目薬による麻酔)を行います
2、専用のコンタクトレンズを装着します
3、線維柱帯に対しレーザーを照射(数分程度)
4、レーザー後、眼圧測定および経過観察
5、普段通りに帰宅いただけまます
※診察後、適応がある場合は当日行うことができます。(混雑状況によりお待ちいただくことがあります。)
※レーザー後、一時的に点眼薬を使用する場合があります
■ よくあるご質問
Q. 治療に痛みはありますか?
→ 点眼麻酔を行うため、痛みはほとんどありません。違和感程度で済む方がほとんどです。
Q. 何回でも受けられる治療ですか?
→ SLTは組織への熱損傷が非常に少ないため、必要に応じて繰り返し施行が可能です。
Q. 点眼薬はやめられますか?
→ 個人差がありますが、点眼の本数を減らせる可能性があります。完全に中止できるかは診察結果によります。
最近では、SLTは、緑内障手術を回避することを目的とした“第一選択”または“中間の選択肢”として位置づけられる治療です。適応がある場合は、すぐに手術に進むのではなく、まずは安全性の高い方法を検討したいという方にも適しています。SLTが適応しているかどうかは、眼の状態・緑内障の進行度・現在の治療方針などを元に判断します。
当院では、患者様に適した治療方法を丁寧にご提案いたします。SLTをご希望の方、ご興味がある方は予約時や診察時にお声かけください。