ブログ

多焦点眼内レンズの脳の適応について➀

普段の生活で、「適応」という言葉は、あまり聞きなれないかもしれません。

一般的には、「その場の状態や条件などによく当てはまること」「生物が環境に応じて形態や生理的な性質、習慣などを長い年月をかけて適するように変化する・させること」「人間が外部環境に適するように意識や行動を変化していくこと」などとして使われますが、今回のタイトルの「適応」とは、多焦点眼内レンズを眼に挿入した際におこる、特殊な見え方に対しての脳が適応(順応)するということについて書きました。

 

多焦点眼内レンズは、眼鏡の使用率を下げるという点からメリットが大きく非常に優れたレンズです。しかし単焦点眼内レンズに比べると、万人向けのレンズとは言えないレンズでもあります。多焦点というレンズの構造上、構造が複雑なため単焦点レンズに比べて脳が見え方に追いつかず、非常に低い割合ではありますが、時間を経過しても視力が向上しない患者さまもいらっしゃいます。
年齢だけで向き不向きを判断することは出来ませんが、これまでの手術後の経過を総じて、ご高齢の方に順応しにくい傾向があるように思います。 

 

単焦点眼内レンズに比べ多焦点眼内レンズは、レンズの性質が向上するほど(焦点数の数が多い、見え方がより自然に近くなればなるほど)レンズ構造が複雑になります。

そのため、waxy vison(ワックスを塗ったような曇った見え方になる)、グレア・ハロー(夜間の光に対する見え方の現象、グレア:光が伸びたり、ぎらついたりしてまぶしく見える・ハロー:光がにじんだり、光の周りに輪がかかったように見える)、スターバースト(夜間や暗い場所で、光のようなものが見える)などを自覚するようになります。

 

多焦点眼内レンズは、焦点数が多く複雑なレンズ構造のものでもほとんどの患者さまに適応しますが、中には適応しない方もいらっしゃいます。
手術前検査を行い、度数や乱視、見え方のご希望などを伺い最適なレンズをご紹介しても、脳の適応を手術前に判断することができません。
手術後の検査で視力検査を行いますが、直ぐに(手術直後から1カ月)視力が回復しない場合は、一定期間、時間を置くことで(3カ月~長ければ半年ほど)順応していくこともありますので、患者さまと相談して待つことになります。
一定期間経過しても見え方に適応しない(脳が慣れない)と判断した場合は、挿入した多焦点眼内レンズを抜去し、単焦点レンズへの入れ替えが必要になります。当院でもこれまでに多焦点眼内レンズを挿入しましたが、時間を経過しても適応しない患者さまがいらっしゃいました。その方につきましては、日常生活においてご不便もありましたので単焦点レンズへの入れ替え手術を行いました。

 

多焦点眼内レンズを①~④に大きく分けました。

①遠近焦点レンズ
②遠方・中間・近方の3焦点レンズ
③焦点拡張型レンズ
 (EDOF型レンズ:遠方から50~60cmの距離が落ち込みなく均一に見える)
④遠方・遠中・中間・中近・近方の5焦点レンズ

 

②3焦点レンズや④5焦点レンズに比べて、③焦点拡張型レンズは、比較的ご年配の方にも順応しやすい傾向にあります。そのため当院では、多焦点眼内レンズをご希望されるご年配の方には、モノビジョン(眼内レンズの度数を、片方の目は近くに合わせるように、もう片方の目は遠くに合わせるように設定し、両目で見たときに近方から遠方まで見えるようにする方法)で術後に眼鏡なしで生活できるようにする方法をご紹介しています。

 

年齢が若いからといって、多焦点眼内レンズが必ず適応(順応)するとは言えません。また、ご年配の方で多焦点眼内レンズが適応している方もいらっしゃいます。手術前の見え方から、手術後のご希望の生活スタイルや見え方をしっかり考えてレンズを選択することで、納得のいく見え方に近づきます。

単焦点眼内レンズ・多焦点眼内レンズのどちらにもメリット・デメリットがあります。

ご質問や気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。

 

TOPへ