近視とは
眼は角膜から入った光が水晶体を通り、網膜上で正しくピントを結び、それを視細胞が電気の信号として視神経を介し、脳に伝えることで映像として認識されます。
「近視」とは眼球が細長くなり網膜の前で像を結ぶ状態をいいます。網膜の上で像を結ばないためピントが合わず、ぼやけて見えてしまいます。特に学童期(8歳から15歳)に急速に進行することが多く、30代まで進行することもあります。
近年世界的な近視人口の増加がオーストラリアのBrien Holden Vision InstituteおよびUniversity of New
South Walesでの研究で明らかになっております。 その報告では2050年には近視により10人に1人が「病的近視」により失明のリスクを持っているとされています。
特に日本を含むアジア太平洋地域での高所得国の近視有病率が46.1%にまで達しております。
近視になる原因
近視は網膜より手前にピントを結ぶことによって起こりますが、近視の発症には遺伝的要因と環境的要因の両方が関与していると考えられております。
近視の遺伝子は解明されており近視の進行の一因となっております。環境的要因としてはスマホやゲーム機の普及・長時間の使用などが挙げられます。特に若年層における視力の低下が顕著になってきています。
通常の近視の場合は眼鏡やコンタクトレンズを装用すれば見えるようになりますが、さらに進行すると矯正視力も低下してきます。
近視進行により起こる疾患
- 近視性網脈絡膜委縮
- 脈絡膜新生血管
- 黄斑症
- 網膜分離症
- 黄斑円孔
- 網膜剥離
- 緑内障
- 白内障
特に近視性網脈絡膜委縮は有効な治療法がないため十分に近視の進行に気をつけなければなりません。
そのため遺伝的に近視のリスクの高い方は近視を予防していくが重要となり、急速に近視が進行している方は抑制することがとても重要となってきます。
当院では、近視の進行を抑制するために次のような方法があります。
※医師の判断や適応検査の結果により、すべての方に適応するものではありません。
- オルソケラトロジー
- マイオピン(低濃度アトロピン点眼液0.01%)
- EDOF型(焦点拡張型)ソフトコンタクトレンズ
また、口腔粘膜より近視遺伝子を検査するキット(近視遺伝子検査キット)も販売しております
近視の検査
視力検査
検査は裸眼と眼鏡やコンタクトレンズを装用した矯正視力があり、通常は片目ずつ行いますが、両眼の視力を検査するケースもあります。
1.0を標準として、0.7以下であれば近視または乱視を考えます。また2.0以上あっても近くが見えにくい場合は軽度の遠視を考えます。なお遠視も重度になると遠くも見えにくくなります。遠視が強いと弱視になりやすく大人になっても視力が出ないこともある為眼鏡装用による早期の訓練が必要です。
屈折検査
子どもの場合は、近視が実際より強く測定される傾向がありますので、場合によってはピント調節を麻痺させる薬を点眼してから検査を行うこともあります。
角膜形状解析検査
これによって、通常の検査では測定しきれない精密なデータを得る事ができ、理想的なコンタクトレンズの選択が可能になります。
またレーシックやオルソケラトロジーなどの近視治療後の精密な視力診断が可能になります。
光眼軸長検査
近視の進行を抑制する可能性のある方法
1近くを見続けず、適度に休憩をとる
毎日1時間以上、外遊びをするお子さまは、近視になる率が少ないという統計がでています。これは太陽光に含まれるバイオレットライトが近視抑制遺伝子(EGR1)を活性化する為です。
2リジュセア®ミニ点眼液0.025%(0.025%アトロピン点眼液)
リジュセア®ミニ点眼液0.025%について
従来に比べ進行抑制効果がより高いことが期待されており、主に小児を対象とした点眼液であることから安全性を考慮した衛生的な1回使い切りタイプ(防腐剤フリー)となり、お子様の目に優しい仕様となりました。使用方法は1日1回就寝前に点眼します。
成分は、アトロピン硫酸塩水和物を0.025%含有しています。アトロピンとは、ムスカリン受容体の可逆的拮抗薬で、ムスカリン受容体の活性化を阻害することにより、網膜又は強膜に直接的もしくは間接的に作用し、強膜の菲薄化 (ひはくか) を阻害することで、眼軸の伸長を抑制すると考えられています。
有効性については、アトロピン点眼0.01%に比べて濃度の高いアトロピン点眼0.025%では、約38%の近視進行抑制効果があることが認められています。なお、この有効性は3年間にわたり持続することが示されています。
対象となる方
- 5歳以上の小児で、軽度から中程度の近視
- 治療中の眼の病気や目薬によるアレルギーがない方
- 医師により適応と診断された方
- 遺伝子検査の結果などから遺伝的に近視進行の素因がある方
- 定期的に検査・診察にご来院できる方
使用方法
就寝前に1日1回1滴を点眼する
治療について
点眼開始(初回)から1か月後、診察・検査にご来院いただきます。
副作用がなければ、次回は2か月後にご来院いただき、それ以降は3か月ごとに定期的に審査・検査をお受けいただきます。
定期的に診察・検査を行いお子様の目の状態を確認した上で点眼液を処方するため、点眼薬のみの処方はお断りしております。また、保護者の方の管理のもとご使用いただくために、未成年者のみのご来院はお断りしております。
費用
リジュセア®ミニ点眼液0.025% 1箱30本入り(約1ヶ月分)
※保険適応外の自由診療となります。
購入スケジュール | 各費用(税込) | 合計(税込) |
---|---|---|
初回 | 診察・検査 5,500円 点眼液(1箱) 4,380円 |
9,880円 |
1か月後 | 診察・検査 2,200円 点眼液(2箱) 8,760円 |
10,960円 |
2か月後 | 診察・検査 2,200円 点眼液(3箱) 13,140円 |
15,340円 |
3か月ごと | 診察・検査 2,200円 点眼液(3箱) 13,140円 |
15,340円 |
よくある質問
副作用はありますか?
瞳孔がやや大きくなり眼内に入る光の量が多くなるため、まぶしさや近くが見えにくいといった症状が起こることがあります。約9%の方がまぶしさを訴えるというデータが出ています。就寝前に点眼するため、翌朝にはほぼ改善されており日中は気にならない場合がほとんどです。就寝が遅くなり使用した場合に、翌朝にまぶしさが残る場合があります。気になる症状がありましたら医師にご相談ください。
点眼をすると近視は治りますか?
近視を治すことはできません。近視進行抑制となり、進行を遅らせる治療です。
どれくらいの期間続けるのですか?
開始年齢にもよりますが2年以上の継続をお勧めします。まずは1年間は使用していただき、定期的な検査結果をもとに効果を判定しながら治療継続の可否についてご相談させていただいています
オルソケラトロジーレンズ・コンタクトレンズ・眼鏡との併用は可能ですか?
可能です。
- オルソケラトロジーとリジュセア®ミニ点眼液0.025%では近視抑制の理論が違いますので相乗効果を期待できます。リジュセア®ミニ点眼液0.025%を点眼し、5分経過後にオルソケラトロジーを装用してください。
- コンタクトレンズを外して、リジュセア®ミニ点眼液0.025%を点眼します。
- 眼鏡の使用に制限はありません。
効果がない方もいますか?
効果には個人差があり、効果がない方もいらっしゃいます。
全身への影響はありますか?
現在のところ、報告はありません。
アトロピンはどのような作用機序で近視進行を抑制しますか?
詳しい作用機序はまだ解明されておりませんがムスカリン受容体に拮抗作用を示すことで眼軸の伸長を抑制すると考えられています。
3オルソケラトロジー
これによって近視の進行を抑制することが可能であることが。近年の研究でわかってきました。近視の程度が比較的軽度である方に適応となり、重度の近視の方や他に眼の病気がある方はオルソケラトロジーによる治療を受けることはできません。また健康保険適用の対象ではありませんので、自費治療となります。
適応となる方
主に8~20歳ぐらいの方で治療される方が多いですが特に20歳以上の方は年齢制限はありません。対象年代の方で近視の度数が-1.0D~-4.0D程度で、近視や乱視の度数が比較的安定しており、他に弱視や緑内障、角膜疾患、ぶどう膜炎、網膜疾患などの眼の病気がない方がオルソケラトロジーによる治療を受けることができます。
基本的に未成年の方は、保護者の方の同行または同意書が必要であり、コンタクトの装用がご自分で可能だと判断できた場合に治療を行っております。
近視遺伝子検査キット
『近視遺伝子検査キット』とは?
費用(税込) | |
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近視遺伝子検査キット | 15,000円(検査機関への郵送費込み) |
※保険適応ではありません。
※医療行為に該当するものではありません。
遺伝子検査を受けると何がわかるの?
紫色のお花はなぜ紫色になるのでしょうか?その理由として、例えば、お花が「赤」と「青」の遺伝子を持っている可能性、育っている土の成分の可能性が考えられます。お花の色は開花して初めて判りますが、「赤」と「青」の遺伝子を持っているかを調べることで、開花前にお花の紫色になる可能性の高さを推測することができます。ここで注意しなければならないのは、遺伝子を解析するだけで「このお花は紫色に絶対なる」と断定できないということです。なぜなら、「赤」「青」の遺伝子を持っていても、発育環境によって「赤」の遺伝子が機能せず、「青」の遺伝子だけの影響で青いお花が咲く可能性もあるからです。しかし、お花が「赤」と「青」の遺伝子を持っていることを知っていると、「今年は青色のお花が咲いたけれど、このお花は赤の遺伝子も持っているから、来年は紫色のお花が咲くよう肥料を工夫しよう」と考えられるため、非常に有益です。
『近視遺伝子検査キット』を通じて遺伝的な近視になる可能性の高さを知ることで、皆様が眼科医等の専門家への相談や近視の進行抑制に役立つ生活習慣の改善のきっかけにしていただきたいと思います。
どのような判定結果が通知されるの?
20歳の時点で近視ではない日本人の遺伝リスクと比較した5段階の判定結果をお知らせしています。
20歳の時点で近視ではない日本人と同等の遺伝リスクの方は「3」、それよりリスクが高ければ「4」「5」、
それより低ければ「2」「1」と判定されます。
※個々の遺伝子の解析結果は開示していません。
解析している遺伝子は、HIVEP3,NFASC/CNTN2,CNTN4/CNTN6,FRMD4B,LINCO2418,AKAP13,ZC3H11B,GJD2,RASGRF1になります。
解析遺伝子に関して、対象集団に日本人集団を含む科学的根拠
“ Genome-wide association study in Asians identifies novel loci for highmyopia
and highlights a nervous system role in its pathogenesis "
(A.Meguro, T.Yamane, M.Takeuchi, N.Mizuki et al., Ophthalmology,
2020)DOI:https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2020.05.014
ご購入の前にお読みください
- 本検査は医療行為に該当するものではございません。
- 本検査により得られる情報は、医師による診断に置き換えられるものでも、補充するものでもありません。
- 医師等の指導があるときは当該指導に従ってください。
- 未成年の方が本検査を実施する場合は、保護者の方の同意が必要になります。
(保護者の方の同意が確認できない場合は、検査を実施いたしません)
『近視遺伝子検査キット』は、消費者向け遺伝子検査です。
近視についてよくあるご質問
近視は治るのでしょうか?
近視には角膜や水晶体の屈折の不具合と眼の軸長が必要以上に伸びてしまうことによる2種類の原因があります。このうち、屈折の不具合によるもので、毛様体が異常に緊張を続けてしまったために起こる仮性近視といわれる状態のケースでは点眼薬による治療で改善が期待できる場合もあります。ただし統計的にはお薬による治療でも視力の改善はあまり期待できないのが現状です。
また、学童期によく見られる、体の成長とともに眼の軸長が伸びてしまったことによる近視を治療することはできません。
眼鏡が必要になるのはどのくらい視力が落ちた時でしょうか?
お子さま
の場合、黒板の字が見えないという訴えがあったら眼鏡による矯正を検討する時期と言えます。教室の後ろから黒板の字が見える限度で0.7程度、前の方の席では0.3程度と言われています。
近視が強くなってきても、眼鏡をかけないでいると、よく黒板の文字が読めずに学習が遅れてしまうこともありますし、球技などではボールが見えなくなってしまうこともあります。また眼の疲れや頭の疲れもひどくなりますので、当院でもある程度近視の度が進んだら眼鏡による矯正をお勧めしています。
眼鏡はかけたり外したりしない方がいいのですか?
眼鏡を掛け外しすると近視が進むという報告はありません。
一般的にいうと、近視の度が軽いうちは、遠くを見るときだけ眼鏡を装用する方がよいとされ、中程度以上の近視の場合は、近くもぼやけてくることが多く、眼鏡をかけたまま生活することがよいとされていせざるを得ないということです。
マイオピン点眼(アトロピン0.01%)療法で、近視の進行は止まりますか?
それぞれのお子さまによって結果は異なりますので、一概にお答えすることはできません。効果が高くあまり進行しなくなるお子さまもいますが、効果が弱いお子さま もいらっしゃいます。
検査のたびに近視の度数が進んでしまいます。このまま失明してしまうことはあるのでしょうか?
強度近視以上の病的近視に進行しますと、網膜の中心部である黄斑部が傷んでしまい中心の矯正視力が低下します。しかし、周辺の視野は残るため失明はしませんが、日常生活に多大な不便を感じることになります。
近視は何歳ぐらいまで進行するのでしょうか?
体の成長とともに眼の軸長が伸びてしまう近視の場合、体の成長がとまる20歳ぐらいになると、眼の成長も止まり近視の進行はほぼ止まります。しかしながら個人差があるため40歳まで近視が進行する場合もありますし、非常に稀ですが一生眼軸長が伸展し続ける方もいらっしゃいます。
オルソケラトロジーをしたいのですが誰でも可能ですか?
強度の近視や乱視の方、他に眼の病気がある方はオルソケラトロジーを受けることができません。事前に適応検査や装用テストなどを行い、慎重に適応できるかどうかを判断します。
スマホやテレビゲームによって近視になりますか?
近視の発症のきっかけとして、明らかな因果関係は認められていません。しかし、スマホやテレビゲームなどを長時間しているお子さまが近視の度が進みやすいことは統計的にもわかっています。近年アジアの先進国のお子さまの近視率が急激に上がっているという報告があります。
適度な休憩を必ず挟むようにして、その際は遠くを見たり、眼を閉じたりしましょう。ただ、それだけでいいというわけではなく、近視を予防するためには、外遊びをするのが一番ですので、1日1時間以上は屋外での活動を心がけるようにしてください。
当院では、近視の進行を抑制するために次のような方法があります。
※医師の判断や適応検査の結果により、すべての方に適応するものではありません。
- オルソケラトロジー
- リジュセア®ミニ点眼液0.025%(0.025%アトロピン点眼液)
- EDOF型(焦点拡張型)ソフトコンタクトレンズ
また、口腔粘膜より近視遺伝子を検査するキット(近視遺伝子検査キット)も販売しております